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人は誰でも歳をとるもので、加齢とともに不自由を感じる機会が増加します。その際に検討したいのが、不自由(バリア)を取り除いたバリアフリー住宅です。
車いすの使用を考慮した設計や、足腰が弱っている人がつかまることのできる手すりなど、安全性や機能性を重視したデザインへ工事を施すことを「バリアフリー改修工事」と言います。このバリアフリー改修工事に対して、政府は減税を中心に支援を進めています。すでに家を持っていてリフォームを検討している方は、チェックしてみてはいかがでしょうか。
それではさっそく、住まいをバリアフリー化することで受けられる優遇措置をご紹介していきます。
まずは、所得税の減税から見ていきましょう。一定の要件を満たしていれば所得税から一定額が控除され、場合によっては数万円の「還付金」が得られます。少し長いですが、要件から確認していきましょう。
[対象となる工事]
・廊下の拡幅
・階段の勾配の緩和
・浴室の改良
・トイレの改良
・手すりの設置
・屋内の段差の解消
・引き戸への取替え工事
・床表面の滑り止め化
[対象者]
(1)50歳以上の方
(2)要介護又は要支援の認定を受けている方
(3)障がい者である方
(4)その人の親族のうち(2)もしくは(3)に該当する方、又は65歳以上の方
のいずれかと住居している方
[その他の要件]
・改修工事の標準的な費用の額(補助金等控除後)が50万円以上であること
・工事をした後の住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上の部分が、専らその人の居住用として使われていること
では、要件を確認できたら、所得税の減額の仕組みを説明いたします。
バリアフリー改修工事に対する所得税の優遇処置には「投資型減税」と「ローン型減税」の2種類があります。自己資金で行う場合は「投資型減税」、住宅ローンを利用する場合は「ローン型減税」が適用されます。
また、「投資型減税」の控除期間は改修後に居住を開始した1年間分のみで、「ローン型減税」の場合は5年間という違いがあります。ローン型は5年間かけて少しずつ還付を受け取り、投資型は1年でまとめて還付を受け取る仕組みです。
1つ目は「投資型減税」です。バリアフリー、耐震、省エネの一定要件を満たすリフォームを対象としています。嬉しいことに、バリアフリーと耐震の両方を行う場合などは制度の併用も可能です。財務省の「既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除」によると、以下のような仕組みになっています。
居住年…平成26年4月から平成31年6月30日まで
控除額の計算方法…工事費の標準的な費用×10%
控除対象限度額…200万円
控除の限度額…20万円
ちなみに、その年の前年以前3年内に適用を受けている場合には控除が受けられないので、注意が必要です。
2つ目は、「ローン型減税」です。返済期間5年以上のリフォームローンを借りて行ったバリアフリー改修工事が対象です。「投資型減税」との併用も可能です。
居住年…平成26年4月から平成31年6月30日まで
控除額の計算方法…工事費の標準的A×2%+(B-A)×1%
A: リフォームの工事費用(限度額は補助金を除いた250万円)の住宅ローン等年末残高の2%
B: その他のリフォームの工事費用相当分(限度額1,000万円)の年末ローン残高の1%
控除対象限度額…200万円
控除の限度額(1年あたり)…12万5,000円
以上が所得税に関する優遇措置です。次は固定資産税を解説していきます。
バリアフリー改修工事をすると、固定資産税の減額を受けることもできます。工事完了後3ヶ月以内に市区町村へ申告すれば、住宅にかかる固定資産税の3分の1が、1年間減額されます。
対象となる工事は所得税控除と同じ要件ですが、家屋の要件は少し異なるので注意しましょう。
[対象者]
(1)65歳以上の方
(2)要介護または要支援の認定を受けている方
(3)障がいのある方
のいずれかが居住している方。
[その他の要件]
・新築された日から10年以上経過していること。
バリアフリー関連で受けられる支援は、税金の優遇だけではありません。住宅支援機構では「フラット35S」で「バリアフリー性に関する基準(高齢者等配慮対策等級3)」を選択すると、数年間金利の優遇を受けられます。「高齢者等配慮対策等級」の「等級3」以上にあたる家屋が対象です。
バリアフリー性に関する基準(高齢者等配慮対策等級3)の概要
http://www.flat35.com/tetsuduki/flat35s/barrier.html
また、住宅支援機構では、「高齢者向け返済特例制度」というリフォーム融資も受けられます。対象者は満60歳以上。バリアフリー工事又は耐震改修工事を含むリフォームを行う場合に、返済期間を申込人(連帯債務者を含む)全員の死亡時までとしています。
毎月の返済は利息のみで、借入金の元金は申込人(連帯債務者を含む)全員の死亡時に、相続人が一括して返済するという制度です。
地方自治体の補助制度も積極的に利用しましょう。改修費用の融資制度があったり、住宅ローン利子の一部を補給してくれたりする自治体もあります。
自治体の福祉課ではローンを利用しない場合でも、自治体が独自に行う補助制度や、バリアフリーの詳しい相談先など、有益な情報が得られます。対象者や条件は各自治体によって異なるので、事前に確認しておくことをおすすめします。
日本では急速に高齢化が進み、介護の深刻な人手不足が懸念されているため、政府もバリアフリー設計によって高齢者が自立して生活することを後押ししています。その波に乗り、制度をうまく利用して、暮らしやすい住まいを造っていきましょう。