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東南アジア並みに蒸し暑い夏と北ヨーロッパに匹敵する厳しい寒さの冬。季節による気温差の激しい日本列島に暮らす私たち。外気温はどうしようもないですが、家の中くらい暑い夏には涼しく、寒い冬には暖かくあって欲しいですね。そのために、夏は冷房、冬は暖房が存在するわけですが、あまりにも冷房や暖房をガンガン効かせていては光熱費が膨大な額になってしまいます。
光熱費を抑えながら過ごしやすい家にするためには、どうすればいいのでしょうか。
光熱費を抑えるために重要になってくるのが、「断熱」です。
従来の日本の家は、断熱があまり重視されていませんでした。窓からも壁からも熱の出入りが多く、そんな家でエネルギーを使って冷房や暖房をしても効率的に活かすことができていなかったのです。
分かっているようで、意外と知らない部分も多い断熱。住まいの快適性と毎月の光熱費に大きな影響があります。家を建てる際に、大きなポイントとなる断熱について、しっかり知っておきましょう。
熱は、温度の高い方から低い方へ伝わっていく性質があります。
熱の伝わりやすさは素材によって異なりますし、気体か液体か固体かによっても大きく違いがあります。熱の伝わり方には、対流と伝導と放射の3種類があります。
対流は、気体や液体の移動によって熱が伝わる現象です。
気体や液体は温度が高いほど軽く、低いほど重いという性質があります。水の入った鍋を火にかけると、鍋底で温められた水は上昇し、冷たい水は下がるという対流が起き、鍋の中全体が温められていきます。
伝導は物質のなかを熱が伝わることです。
固体は伝導で熱を伝えやすく、気体は伝えにくい性質を持っています。例えば鉄などは伝導で熱を伝えやすいので鍋やフライパンとして利用されています。
放射とは、物質がそれぞれの温度によって出す放射熱による熱の移動を言います。
寒い日にたき火にあたると暖かいのは、たき火からの放射熱が人体に届くためです。
断熱とは、文字通り熱が伝わるのを防ぐことを言います。
先ほど述べたように、物質によって熱の伝わりやすさは異なり、金属は伝導によって熱を大量に伝えます。これに対して空気には熱を伝えにくい性質があります。
そこで、対流が起きにくいように細かく分かれた空気を内部にたくさん含んでいると熱を伝えにくい物質となります。このように熱を伝えないようにするために作られた材料を断熱材と呼びます。
断熱材には、大きく分けて繊維系の断熱材とプラスチック系の断熱材があり、どちらも内部に空気を保持することで高い断熱性能を実現しています。
断熱材としてよく使われているグラスウールは、ガラスを溶かして繊維状に加工したものです。繊維のすき間に空気を保持することで断熱性能を実現しています。繊維系断熱材は低価格な反面、材料のなかに水蒸気が入りやすく、性能が落ちる可能性があります。
さまざまなプラスチックを発泡させてつくるのがプラスチック系断熱材です。これは気泡のなかに閉じ込めた空気の断熱性能を利用しています。多く使われているのがポリスチレンで、ウレタンフォームは板状のものと現場で吹付け発泡するタイプのものがあります。
家の断熱工法には、大きく分けると充填断熱工法と外張り断熱工法があります。
充填断熱工法は柱などの構造材の間に断熱材を充填する方法です。壁の内側の空間を利用するため、支持材などで新たに断熱用のスペースをつくる必要がなく、外張り断熱より低コストになるケースがほとんどです。
外張り断熱工法は柱などの構造物の外に断熱施工します。断熱材を切れ目なく施工でき、壁にある障害物の影響も受けません。すき間のできにくい外張り断熱工法は気密性を高めることも容易です。
では、具体的に家のどの部分を断熱すればいいのでしょうか。まずは、外壁や屋根、床など外部に接している建物の部位に断熱材を施工します。断熱材は種類が豊富です。また、施工方法によって選ぶべき断熱材も変わってきます。断熱工法のそれぞれのメリット・デメリットを考えて、自分の建てる家に合う工法を選び、断熱材を決めていきましょう。
窓やドアからの熱の出入りも大きいので、開口部のガラスには複層ガラスを使用し、断熱性のあるドアやサッシを選ぶことも忘れないようにしましょう。